原子力・放射線に係る国家資格について

今までいくつかの記事にて国家資格について触れてきましたので、あらためて一つの記事としてまとめたいと思います。

ただし、私自身学生であり知識の獲得を目的としているため、講習のみの資格や実務が必要な受験資格みたいなものは名前とかだけ載せて内容は省略気味です。そもそも情報が少ないしね。

 

 

まず、資格・試験一覧です。[ ]にはそれぞれの試験や登録を行う団体を記しています。

 

1. 放射線業務従事者 [各事業所等]

2. 運転責任者判定 [原子力安全推進協会]

3-1. 核燃料輸送警備2級 [各都道府県公安委員]

3-2. 核燃料輸送警備1級 [各都道府県公安委員]

4. エックス線作業主任者 [安全衛生技術協会]

5. ガンマ線透過写真撮影作業主任者 [安全衛生技術協会]

6. 第一種作業環境測定士 放射性物質(放射線) [安全衛生技術協会]

7-1. 第三種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

7-2. 第二種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

7-3. 第一種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

8. 核燃料取扱主任者 [原子力規制委員会]

9. 原子炉主任技術者 [原子力規制委員会]

10-1. 技術士一次試験 原子力放射線部門 [日本技術士会]

10-2. 技術士 原子力放射線部門 [日本技術士会]

 

以上です。あくまで私の知っている限りですが。

それではここからそれぞれの資格について概要とコメントを紹介してゆきます。

 

 

 

1. 放射線業務従事者 (各事業所等)

 初めて放射線業務従事者になるものは電離放射線健康診断と合計6時間以上の講習(時間は科目毎に詳細に定められている)を受ける必要があります。[1]

 これらは基本的には受ければ良いものですので難易度などはない上に、なりたくてなるというよりも必要性が出てきて講習を受けるような資格ですので特にコメントは有りません。

 

[1]ATOMICA, 放射線業務従事者の教育訓練練,

https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-04-09-06.html

 

 

2. 運転責任者判定 [原子力安全推進協会]

 基本的には電力会社の社員(原子炉の運転員)を対象にした資格であり、筆記試験、口頭試験、講習があります。[2]

 こちらも受けたくて受けられる試験ではなく、勤めている電力会社に言われて取りに行くような資格です。

 

[2]原子力安全推進協会, 運転責任者判定, 

http://www.genanshin.jp/activity/operation-supervisor-qualif.html

 

 

3-1. 核燃料輸送警備2級 [各都道府県公安委員]

3-2. 核燃料輸送警備1級 [各都道府県公安委員]

 こちらは筆記試験合格と講習を受けて登録との2つ方法があります。輸送の際に有資格者1人以上必要だったはず。

 2級は受験資格はなく、1級は1年以上の実務経験が必要です。こちらに至ってはあまり情報がなくよくわかりませんが2級なら取りたければ取れそうですね。年に1回くらいだけれど。[3]

 

[3]ジョブコンプラス, 核燃料輸送警備2級はどうやって取得すればいい?

https://job-con.jp/special/security/guide/license18

 

 

4. エックス線作業主任者 [安全衛生技術協会]

 ようやく学生に関係ある資格です。受験資格はなく、誰でも受験できます。管理、測定、法令、生物影響の4科目全て五肢択一式のマークシートです。参考書もあるのでそれを使って過去問を少し解いておけば難しい資格では有りません。2ヶ月に1度位のペースで試験があります。私の受験期もあるのでご参考ください。[4]

 

[4]エックス線作業主任者試験 概要, 

https://radio-atomic.hatenablog.jp/entry/2022/02/12/195414

 

 

 

5. ガンマ線透過写真撮影作業主任者 [安全衛生技術協会]

 前項のエックス線と同様、受験資格はなし。試験科目は実務、法令、装置の知識、生物影響の4科目で択一式のマークシート。[5] ただし参考書はほとんど無いため対策法が限られます。その上試験会場ごとに1年に1回。私はエックス線の参考書を用いて、あとは過去問でゴリ押しました。過去問は暇人ライセンス様のHPから。ただしちょくちょく正答が間違っているので頑張ってください。[6]

 

[5]安全衛生技術センター, ガンマ線透過写真作業主任者, 

https://www.exam.or.jp/exmn/H_shikaku710.htm

[6]暇人ライセンス, 労働安全衛生免許, 

http://himajin.g2.xrea.com/license/anzen/index.htm

 

 

6. 第一種作業環境測定士 放射性物質(放射線) [安全衛生技術協会]

 労働安全衛生法による免許の最後の項目、作業環境測定士です。第一種にのみ選択科目(専門科目)が存在し、その中に放射性物質(放射線)があります。ただし、受験資格として最低1年の実務経験が必要なので、こちらも学生は入手できません。[7]

 過去問を確認してみた感想としては、専門科目はRI(放射線取扱主任者)1種の実務科目を簡単にしたような感じ。共通科目はよくわかりませんが、化学が苦手だと難しそう。

 

[7]安全衛生技術センター, 作業環境測定士, 

https://www.exam.or.jp/exmn/H_shikakusakan.htm

 

 

7-1. 第三種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

 お待ちかねのRI主任者。第三種は試験ではなく2日間の講習を受けた後に修了試験に合格することで免許申請が可能になります。

受講資格は18歳以上であることで、受講料は93,398円、講習会場は東京と大阪の2ヶ所のみです。[8]

2種合格後の講習受講料が10万円程度なので3種の講習を受けるくらいなら2種を頑張って勉強するほうが有意義かとおもいます。

[8]原子力安全技術センター, 第3種放射線取扱主任者講習,

https://www.nustec.or.jp/the2nd/the2nd01.html


 

7-2. 第二種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

 放射線に関する資格の登竜門、RI2種ですね。RI2種やRI主任者、放取とか呼ばれている試験です。試験科目は法令、実務、物化生の3科目です。[9] 毎年お盆のあとに1回のみの試験ですが、試験は択一式のマークシートなのでそこまで困難では無いと思われます。問題をざっと見た感じだと、1種に受かるために必要な勉強量を100とすると2種は80くらい。それだったら一気に1種受けたほうがいいんじゃないかしら。まあ受験料が1万円くらいなので、小手調べとして受けるのもいいと思います。

 

[9]原子力安全技術センター, 放射線取扱主任者試験(第1種、2種), 

https://www.nustec.or.jp/syunin/syunin01.html

 

 

7-3. 第一種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

 メインの資格である放射線取扱主任者です。ガンマ線やエックス線はあまりに簡単だし、核燃料や原子炉主任はあまりに困難。その中間にあり、まあしっかりと勉強してゆけば確実に取れるよねみたいな資格がこちらです。試験は毎年夏に一回なので頑張って。

 科目は物理、化学、生物、法令、実務の5科目。以前は物化生がありましたが、分解されてそれぞれの科目に組み込まれました。受験料は1万5千円。基本は五肢択一式のマークシートですが、物、化、生の後ろ2問と実務科目は大問であり20択くらい与えられて穴埋めを繰り返していく方式なので若干難易度が上がります。

 基本的には高校の理系科目(地学除く)は全部わかっていたほうがいいと思います。もちろん、物理の中で熱力学はあまり関係ないし、化学の有機化学は出てこない、生物は細胞分野だけで十分ですが、関係ある部分に関しては高校レベルの知識が必要。あとは放射線の知識として学んでいってください。

 過去問をやるのであれば、物性化も解いておくことをお勧めします。

 

参考ページは2種と同様[9]です

 

8. 核燃料取扱主任者 [原子力規制委員会]

 核燃料取扱主任者はウランやプルトニウムなどの元素を取り扱うときに必要な資格です。その他のRIは放取の資格で十分ですが、核燃料物質だけは別ということですね。試験についてですが。法令、物化、取り扱い、防護・計測の4科目、全て2時間です。放取1種に合格(免状取得でなく、合格で十分)していると防護・計測が免除になります。

 受験料は47,700円。年に一回3月上旬の試験であり、事前に履歴書を提出したりする必要があります。そのうえ合格発表は6月となかなかの引き伸ばしっぷり。毎年50人から100人程度しか受験しない上に合格率は5%から40%程度。合格基準は各科目6割以上ですが完全に筆記試験(マークシートではない)なので難易度は高いですね。てか、こんなの受ける人は電力会社とかで長年働いた上に命令で受験しているだろうに合格率が3割程度とはどれだけ厳しいのかってことですね。

 受験申請が1月中なので余裕があれば受験したいと考えています。

 [10]原子力規制委員会, 資格・試験, 

https://www.nsr.go.jp/procedure/examination/index.html

 

9. 原子炉主任技術者 [原子力規制委員会]

 核燃料取扱主任者と同じく、原子力規制委員会による資格試験。こちらはさらに科目が増えて法令、原子炉理論、原子炉設計、運転制御、燃料・材料、測定・防護の6科目、3日間もあるなんてめちゃくちゃ長いですね。

 受験料はさらに上がって52,100円。核燃料と同じく履歴書の提出が必要だったりします。さらに厳しいことに、これまで記載したのが一次試験であって二次試験(口頭試験)も存在します。一次試験に職歴は必要ありませんが、2次試験を受けるためには6か月以上運転業務に勤めていた証明若しくは指定された教育課程の修了証明が必要なようです。[11]

 まあなんにせよ高難易度資格であることは間違いないですね。受験予定はありません。

 [11]原子力規制委員会, 資格・試験, 

https://www.nsr.go.jp/procedure/examination/index.html

 

10-1. 技術士一次試験 原子力放射線部門 [日本技術士会]

 日本技術士会の主催する資格試験。その名の通り技術士になるための試験です。例年10月頃に試験が行われ、技術士は21部門 (一次試験は20部門で、技術士のほうは総合技術管理部門が追加) 存在しますが、その中の20番目に原子力放射線部門があります。受験料は11,00円です。[12]

 技術士一次試験の科目は、基礎、適正、専門の3科目です。点数は15、15、50ですが、いずれも50%が合格基準ですべて5肢択1式。ちょっと出題形式が特殊なんですが、基礎科目はさらに5単元に分けられており、それぞれの単元に5問出題されます。そして受験者はそのうち各単元から3問ずつ選んで回答します。こういった形式なので苦手をなくすというよりも得意を確実にする方が有効な対策でしょう。問題難易度は高校+α程度。大学卒業レベルというよりかは、大学の前半二年で習うような基礎科目が出題されております。

 そして適正科目はなんもいうことないレベル。まともな人間(倫理観と国語力が大学レベル)なのであれば過去問を3周くらいすれば難しくありません。その程度。

 最後に専門科目ですがこれまた特殊。出題は35問そのうち、受験者が好みで選択し25問回答すればいいのです。また、問われる内容は簡単にした放射線取扱主任者or核燃料取扱主任者ってところでしょうか。いずれにせよめちゃくちゃ難しいわけではなく、原子力(発電)にかかわる基礎的な内容を幅広く扱っています。

 案の原子力部門の参考書はあまりありませんが、残りの二科目は充実してます。一応15年くらい前の専門科目の参考書 (電気、情報工学との抱き合わせ) がありましたのでそれを利用しましたが入手困難かも。技術士会がネットで解説公開してるので、過去問で頑張ってください。

[12]日本技術士会, 試験登録情報, 

https://www.engineer.or.jp/c_categories/index02009.html

 

10-2. 技術士 原子力放射線部門 [日本技術士会]

  技術士は、名誉独占資格と呼ばれる資格であり、「技術士の資格がないとできない業務」は存在しません。そのため金にならないといえば金にならないのですが、「技術士」という資格は国際的にエンジニアの能力を担保するために作られた資格であるため、実力証明としては有効でしょう。

 ただ、金にならない割に受験資格が厳しくかつ、合格難易度も高いことからコスパは悪そうですね。ちなみに受験料は14,000円。資格マニアも寄り付かない(寄り付けない)資格です。受験日程は毎年7月の上旬に筆記、筆記に合格したら12月〜4月に口頭試験を受けて合格発表という形です。

そして受験資格ですが、

【総合技術監理部門以外の技術部門を受験する場合】[13]

(1)技術士補に登録し、技術士補として通算4年を超える期間技術士を補助したことのある者。

(2)技術士補となる資格を有した日から、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者の監督のもとに当該業務に従事した期間が通算4年を超える者。

(3)科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務に従事した期間が通算7年を超える者。(技術士補となる資格を有した日以前の従事期間も算入することができます。)

 

こんな感じ。(1)、(2)は1次試験に合格してから実務につけという話。(3)は1次試験の合格はいつでも良くて、例えば「仕事で10年専門能力に必要な業務に勤め、昨年技術士1次試験に合格した」みたいな人でも大丈夫ということですね。あと、大学院で専門に関する研究をしていれば、各年数を2年短縮できるようです。

 そして試験科目についてですが、筆記は専門科目のみ。ただし専門科目の中に必須科目と選択科目があり、以前は選択が5科目あったのですが、現在原子炉システム・設備、核燃料サイクル及び放射性廃棄物の処分・処理、放射線防護及び利用の3科目のみとなっております。

 この筆記試験合格者のみ口頭試験が行われて合格発表となっております。私もいつかは欲しい資格ですが、学生であるうちは当分関係無く、まずは核燃料から頑張ろうかなと思っています。

 

 

 

 

以上。ようやく10個程度の資格についてお話しました。記事を書いたときのやる気によって熱が入っていたり入っていなかったりしますが、大目に見てください。とにかく名前だけ見て、気になる資格があったら是非受験を検討してみたらどうでしょうか。

あ、学生(18歳以上)が取得できる資格を最後に残しておきますね。

1. 放射線業務従事者 [各事業所等]

3-1. 核燃料輸送警備2級 [各都道府県公安委員]

4. エックス線作業主任者 [安全衛生技術協会]

5. ガンマ線透過写真撮影作業主任者 [安全衛生技術協会]

7-1. 第三種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

7-2. 第二種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

7-3. 第一種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

8. 核燃料取扱主任者 [原子力規制委員会]

10-1. 技術士一次試験 原子力放射線部門 [日本技術士会]

 

ただし、この中で試験がなかったりするものがあるのでそれらを除くと

 

(3-1. 核燃料輸送警備2級 [各都道府県公安委員])

4. エックス線作業主任者 [安全衛生技術協会]

5. ガンマ線透過写真撮影作業主任者 [安全衛生技術協会]

7-2. 第二種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

7-3. 第一種放射線取扱主任者 [原子力安全技術センター]

8. 核燃料取扱主任者 [原子力規制委員会]

10-1. 技術士一次試験 原子力放射線部門 [日本技術士会]

 こんな感じ。

私のオススメは、

・エックス線取扱主任者

ガンマ線透過写真撮影作業主任者

技術士一次試験

放射線取扱主任者

の4つですかね。放取を取るなら上の2つはいりませんので、学部2, 3, 4年生なら放取の1種と技術士一次を目指せばいいのではないでしょうか。1年生は基礎的な知識を得るためにエックス線とガンマ線とがおすすめです。

 

それでは長くなりました。お金と時間があれば核燃料輸送警備2級も講習に行きたいなあと思ってます。